震災復興に向けて、建築学生にできること
-東北大学建築系スタジオ合同発表会-
東北大学建築学科による学部4年・修士1年時設計課題の合同講評会。
外部講師の松原弘典氏とヨコミゾマコト氏を招いてクリティーク・ディスカッション。
■ 日時:2011 年 7 月 19 日(火)10時−16時
■ 場所:せんだいメディアテーク1階オープンスクエア
■ 参加費:無料 直接会場へ
■ 問合せ:sugawami@m.tohoku.ac.jp(東北大学都市・建築デザイン学 技術職員 菅原)
*当日はユーストリーム放送もいたします。
番組視聴はわすれン!のホームページからご覧ください。http://recorder311.smt.jp/
<修士1年設計課題>
○外部講師/松原弘典 建築家 慶應義塾大学准教授
○指導教官/小野田泰明 東北大学大学院工学研究科 都市・建築学専攻 教授
http://d.hatena.ne.jp/china-studio/
『せんだいメディアテークの改修を通して「その場にふさわしい」空間を考える。』
東北大学で建築を学ぶ大学院生に向けて毎年行っている設計スタジオは、今年はせんだいメディアテークの7階を対象に、「その場にふさわしい空間」について考えてもらう内容で進めています。
「その場にふさわしい」というのは「美しい」とか「使いやすい」とかいう評価とは違います。それはより文脈的であり、周辺に依存しており、関係の中でできあがっているはずのものです。学生のみなさんに、今その場所にある関係に敏感になってもらい、そこになにか新しいものを加えることを構想してほしいと考えてこのような課題を設定しました。
このスタジオの課題は、3月11日に発生した東北大震災と関係しています。毎年海外の敷地を対象に実施やっているこのスタジオを、今年は仙台の、公共建築の内装設計にテーマを変更し、また海外の大学との交流もキャンセルしてこのスタジオを実施しています。これは私たちにとって、地震の負の影響と言わざるを得ません。
しかし同時に、私はここで、私たちがこの地震をきっかけに、自分たちのまわりの環境というものをもう一度深く考えさせられる状況に置かれていることを、みなさんといっしょに前向きに受け止めたいと考えています。地震で我々は多くを失い、生活の変更を余技なくされました。そのほとんどはそのまま受け入れなくてはならないようなものばかりですが、なんとか一矢報いたい。設計スタジオをその一矢にしたい。これは今の我々ができる、地震に負けない、ささやかな態度の表明でもあると思っています。
私はここで壊れたものを文字通り直すとか、新しい都市を作るチャンスだとか、そういうことを言っているのではありません。それは他の人にやってもらえばいいと思っています。私たちがここで、大学院のスタジオとして集中すべきなのは、失われる前の状態に敏感になり、それをよく思い出し、なにかそこに新しいものをつけたすこと、です。私たちの前でたくさんのものが失われてしまいました。
それは比喩的な意味でなく現実的に、です。その現実を前に、みなさんと出来る限り知的に強いものを、メディアテークを舞台に構想する、このスタジオではそうしたことを目指したいと思っています。(松原弘典)
<学部4年設計課題>
○ 外部講師/ヨコミゾマコト 建築家 東京芸術大学准教授
○ 指導教官/堀口徹 東北大学大学院工学研究科 都市・建築学専攻 助教
2011年、未曾有の災害が契機となり私たちの意識は大きく変わった。従前の価値観や判断基準は全面的な見直しを迫られている。この新しい時代の胎動のなかにあって、本計画は単なる設計演習課題ではなく、われわれの目の前の現実と向かい合いながら、高い実現可能性をもつ地域再生プログラムを構想するものであり、さらには、次の時代にふさわしい社会的普遍性を探るものである。本計画参加者には、多分野にわたる情報収集を行う一方で、計画対象地域に深く染入るように関わり、その地域の地勢・産業・文化・社会などの固有性を最大限に活かした将来像を構想することが求められる。
地域遺伝子とは、生物多様性保全の立場から、外来種の持込みや放流などによる遺伝子攪乱に対する地域固有種の保護・再生に向けた取り組みから用いられ始めた生物学用語である。ここでは、山から海底までの地形条件、気象や植生などの自然条件、人々の経済活動や生産活動、集落や神社仏閣の配置、交通網の変遷、祭や芸能、過去の災害の記録とその対策、教育や福祉の実態と自治体の取組みなど、その地域に関連するあらゆる情報を遺伝子ととらえ、その総体を文化的地域遺伝子と呼ぶ。本計画は文化的地域遺伝子に着目し、破断された部分を縫合・再生し、その上に新たな情報を書き重ねて行くものである。そのためには、地域の固有性のみならず、現行の社会制度、例えば再開発やまちづくり、あるいは補償や保険、税や融資などの諸制度も含めたプログラムが求められる。
東日本大震災による被災地のなかから、宮城県石巻市雄勝町明神地区を選び本計画対象地とする。
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