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せんだいメディアテーク
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ヤングファーマー農宴

第1回「有機栽培と慣行栽培」

■ 日時:2013 年 11 月 16 日(土)15:00−17:00
■ 会場:せんだいメディアテーク 6f ギャラリー4200

■ 参加無料、申込不要、直接会場へ

■ 問合せ:kyoju_no3@yahoo.co.jp(宮城県4Hクラブ/大槻)
■ 主催:せんだいメディアテーク、宮城県4Hクラブ

▼第1回テーマ  「有機栽培と慣行栽培」

一度は耳にしたことのある無農薬、自然栽培、オーガニックなど、それらは一般的に有機栽培と言われるものです。それに対して慣行栽培というのは化学肥料や農薬も使用する一般的な栽培方法です。

今回はこの有機栽培と慣行栽培の一方の善し悪しではなく、農業の中での双方の関係性や、それぞれの今までとこれからと食の安心・安全について、実際の生産者の声を交えながら、集まったみなさんと考えていきたいと思います。


▼ゲストヤングファーマー

・菅原達徳さん(登米)

昭和59年生まれ。東京の農業大学を卒業後、地元で就農。無農薬や、減農薬栽培に取り組む。おもな生産物は、米、トマト、おくら、ミニ白菜、ミニ大根 など


・大内貴生さん(栗原)

茨城県の鯉渕学園農業経営科学科を卒業後、地元で就農。減農薬減科学肥料で米や野菜を栽培。おもな生産物は、米、ミニトマト、スナップエンドウ、コカブ、かぼちゃ など


▼活動趣旨

宮城県内の若手農家がホストとなり、食卓に並ぶ農作物や、農業という営みについてゆるやかに考える場をひらきます。有機栽培や慣行栽培、放射能、TPPやこらからの農業のことなど、現場のリアルな声を届けつつ、参加者のみなさんと近い未来の食卓を描いていきます。

 

第1回ヤングファーマー農宴「有機栽培と慣行栽培」レポート

気持ちいい好天に恵まれた土曜日。宮城県内の若手農家団体4HCのメンバーがホストとなり、参加者の皆さんと農業のことについてお互いの考えや意見交換し、明日の食と農業について考えていこうという企画。ヤングファーマー農宴~おらとあんだとくいもんと~の第1回が開催されました!今回のテーマは『有機栽培と慣行栽培』です。

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ゲストヤングファーマーとして、有機栽培のお話を登米市の菅原達徳さん、慣行栽培のお話を栗原市瀬峰の大内貴生さんに担当していただきました。
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達徳さんは登米市迫町で無農薬栽培の農業に取り組んでおり、田んぼにいろいろな生き物が増え、自然の本来の環境で農業をしていきたいと語ってくれました。達徳さんが用意してくださった写真の中に田んぼでヤゴが羽化してトンボになる写真があり、水や環境の良さがわかる印象的な写真で、達徳さん自身も人柄があふれるとても柔和で和やかなトークを展開し会場全体の雰囲気も良く素晴らしいお話をしてくださいました。
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対話の時間では、今回のテーマからはすこし脱線しますが、参加者の方から『会社員は、国から補助金なんて出ないけど、農家の方々は補助金が出るからいいですよね。補助金についてどんなふうに考えてますか?』といった難しい質問も投げかけられました。やはり消費者のみなさまからしてみるとそういったお考えの方もおられるのですね~耳が痛いです。
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しかし、そういった質問に対して貴生さんの返答は『まず、普通の会社ではなぜ補助金がでず、農家だけがそういったお金をもらえるのか? ご意見はごもっともです。ですが、ふつう一般的な会社では国から生産量を減らせとは言われませんよね? 我々農家は国から直接生産量を減らしてくれ、その分補助金をだす。といったいわゆる国の減反政策などの生産調整を受けるという特殊な職種なんですよ。それが日本の農業なんです。それに補助金に頼るということは、実はコントロールされてしまうということなんです。だから、自分としては補助金に頼らずにその土地のポテンシャルを最大限に活かしながら、自立した農業を続けていきたいと考えています』と、同じヤングファーマーの私自身、貴生さんの受け答えに胸が熱くなりました。
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私と共に企画段階からいろいろと関わっていただいた、蔵王町の農家関口英樹さんにもお話をしていただきました。 関口さんからは、今回のテーマに関して「有機栽培は、『認定』をお金を出してうけないと『有機栽培』と言えなくなってしまった。そのような関係ではなく、実際に自分たちの畑を消費者の方にも見てもらったり、顔の見えるような関係をつくっていって、関係性のなかで信頼を築いていけたらと思う。また農薬は“悪だ”というイメージが強いが、それは一昔前の話。今、いろいろと農薬も改良されて、身体への負担や影響もかなり少なくなっている。『有機栽培』、『慣行栽培』のどちらか一方の良さではなくこのようなイベントを通して双方の関係性を知って、自分自身で選んで欲しいと思います」と語ってくれました。

たしかに、食の安全安心を謳う現代日本ではいまだに農薬は“悪い”といったイメージは強いと思います。ですけど、米や野菜といった農作物だって生き物なのですから、人間と同じく病気だってします。そういった病気になったとき人間だったら薬を飲みます。農薬も病気やあらゆる外敵から守るための薬だという認識も必要かもしれません。

また、この話題に関して貴生さんから「ここ数年、カメムシが大量発生しているんです。東北では越冬できなかったはずのカメムシも、住宅などに断熱材が多く使われるようになるにつれ越冬できるようになり、農作物への食害が続いているのが現状です。そうすると農薬を使わなくてはならない場面が出てくるんですよ」という発言もありました。みなさんの暮らしと、農業もじつはこのようなつながりがあるんですね。

広報活動や河北新報さんに取り上げられたこともあり、会場には予想を上回る大勢の方々に来場していただきました。イベント当日も河北新報さんをはじめ複数メディアの方々も取材にいらしていた様子。改めて企画の関心の高さを確認しました。

初めての試みでおぼつかない進行や思ったようにテーマに沿ってお話を展開できなかったところなど、次回に向けての課題も見えてきました。本当は、前半でゲストさんとおじいさん、おとうさんの時代の農業から今の自分の農業スタイルの変化や、将来についての夢などを語り、後半で参加者の皆さんとの対話の場を作りたいとイメージして臨んだのですが、司会は難しいですね。肝心のみなさんとの対話の時間をあまりつくれなかったので、次回はもっとそのような時間をもちたいと思っています。

イベント終了後はゲストのお二人に用意していただいた2013年産新米お試しパックの直売会も行いました。参加者のみなさんほとんどが購入していってくださり、あっという間に完売しました。ありがとうございます。
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終了後は参加者の皆さんからいろいろと質問を受けたり、イベント時よりもこっちのほうが活発な意見交換ができたのではないかというくらい、いろいろな方を交流ができました。でも、次回からはこのような時間をなるべくイベントの時間内に持ち込めるように準備したいと思います。

最後に、今回の企画を通して農業という営みに対する関心の高さを感じられたことが一番飲印象に残っています。参加者の年齢層も20代から70代くらいの方々までさまざまでした。

そして企画を円滑に進行させることのむずかしさや、自分たちの伝えたいことが参加者の皆さんの知りたいということにたいして必ずしもイコールではないということも同時に実感しました。その違いも含めて対話を展開していく技量も求められるんだなぁと感じました。今回のイベントは我々スタッフ反省点の多い第一回となりましたが、参加者のみなさんが書いてくださったアンケートからは面白かったというお声もいただきました。

我々農家は、お米や野菜などの農産物を作り、それを食す方々に満足して頂けるよう、日々良いものを作るために勤しんでいます。ですが、農家一年目からすべてがうまくいくヤングファーマーなんてほとんどいません。これからこの企画も多くの参加者の方々と活発に語り合えるようなイベントに育てていきたいと思いました。
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次回1月26日(日)のテーマは『災害と農業』です。先の大震災を教訓に備える農業について皆さんと考えていきたいと思います。
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報告:大槻雄一郎(ヤングファーマー農宴)

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