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こけし、かだる?

第3回作並編(ゲスト:作並系工人・平賀輝幸さん)

■ 日時:2014 年 4 月 27 日(日)14:00−16:00
■ 会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
■ ゲスト:平賀輝幸さん(作並系工人)
■ 聞き手:こけしぼっこ
■ 参加無料、申込不要、直接会場へ
◎こけしをお持ちの方はご持参ください
◎こけしをお持ちでない方もお気軽にご参加ください
■ 問合せ:kokeshibokko@gmail.com(こけしぼっこ)
■ 主催:せんだいメディアテーク、こけしぼっこ
■ 助成:財団法人 地域創造

 

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こけしと私の出会いを語り、こけしと誰かの出会いに耳を澄ます。

「こけし、かだる?」は工人(こけしを作る人)のお話をうかがいながら、産地の真ん中で、参加者のみなさんと、こけしとその周辺について語り合う場です。

今回は、平賀輝幸さん(作並系工人)をお迎えします。みなさんのご自宅にあるこけしをお持ちください。

 

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こけしぼっこ

こけしを愛好する仙台在住の3人組。リトルプレス「こけしの旅の本」の発行や、こけしで遊ぶイベント「こけしぼっこ」などを主催。 市内の幼稚園・イベントなどで、こけしが演じる昔話「こけし劇」の公演もおこなっている。

http://kokeshibokko.jugem.jp

 

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第3回こけし、かだる?「作並編」レポート

仙台にも春がやってきました。暖かい日差しに体の力がふっと緩むようなお天気です。
33名のお客様が熱い思いとともにマイこけしを持参してくださいました。
ご参加いただきありがとうございました。

写真01

今回お招きしましたのは、作並系こけし工人 平賀輝幸さん。
「第56回 全日本こけしコンクール」で内閣総理大臣賞を受賞されたばかりです。
会場の可愛い女の子からの花束のプレゼントを受け取ると、皆拍手でお祝い。笑顔と共にスタートです。

写真02

「受賞の連絡の電話がきて、母ちゃんが先に取って。「本当に息子でいいんでしょうか?」ってわけわかんないこと言ってしまって」
人前で話すのは苦手とおっしゃっていましたが、輝幸さんの穏やかなお人柄と柔らかな声で会場は和やかな雰囲気に包まれます。

 

前半は参加者の皆さんのこけしのお話を伺う時間。
トップバッターは、たくさんのこけしをリュックに詰め込み、チャックが閉まらない状態でやってきた男性。何と、こけしを追いかけて65年だそう。
緑色の描彩が目を引くこけし(中に小豆が入ってカラカラと音が鳴ります)や闇夜こけし(胴に輪が削り残されたもの)をお持ちくださった男性も。

一人旅でこけし工房を訪ねたという女性からは、工人さんとのお手紙のやりとりのお話や、「両親が一人旅を怪しんでいたけれど、工人さんが心配して家に連絡をくれたことで疑いが晴れたんです」なんてたのしいエピソードも。

ピエロのような水玉柄の三角帽子をかぶったこけしをお持ちくださった女性は、制作者である工人さんの「自分がいいと思うものを作っていれば、それがいずれ型と言われるものになるんだ。」というお言葉についてお話ししてくださいました。工人さんのこけしに対する想いや生き方までも感じられる深い言葉。

写真03 写真04

こけしと同じ型の羊毛フェルトこけしをお持ちくださった女性も。津軽こけし館で見つけて運命を感じ連れ帰ってくださったそう。制作者のこけしぼっこ木下は嬉しいやら照れくさいやら。

こけし歴が浅いとおっしゃいながらもこけしの表情を的確な表現で話される女性や、スキー目的で作並温泉駅前に車をとめていたところ「うちの工房の駐車場にとめたらいい」と声をかけられ、それ以後工房に足を運ぶようになったという男性もいらっしゃいました。

こけしと思い出が対になっていること、聞いているこちらも笑顔になります。

 

後半は輝幸さんにスポットを当てて、工人のある一日、一年、人生のお話を伺います。

まずはある一日から。
繁忙期は、毎日早朝4時まで仕事をしての3時間睡眠。工房の近くにホテルがあることから早朝4〜5時にお客さんが来るという驚きのお話も。

昼食後、つかの間の昼寝をして夕食まで仕事。
長時間にわたる仕事の合間、工房の裏で煙草を一服するのが輝幸さんのたのしみだそうです。

写真05

しかし、たのしみの煙草を断った時期もあったそう。これは、取材のときにお伺いした話しですが、お父さまが体調を崩されたとき、自分の好きなものを断って願掛けをしたのだそうです。父であり、師匠でもある謙一さんへのすがるような思いがにじむエピソードです。

絵付け作業の中でも顔を描くのが好きで、こんな顔にしてみようなどと色々試みるそう。
可愛い表情の作並系こけしは目がポイント。
精密な轆轤模様も作並系こけしの特徴の1つです。
カラフルな轆轤模様の平賀こけしをお持ちくださった女性も「この子は女子力がすごいと思うんです」と絶賛。

写真06

「このこけしも配色をいろいろ試してみて、これが一番いいと落ち着いたものです。」
輝幸さんの言葉を聞くとなるほどと納得。
イベント用のこけしはまず大きなこけしを制作して、それから小さいこけしを何百本も制作するそうです。
「先に大きいこけしを並べると販売スペースがうまるから…」という理由を聞いて会場に笑い声が。

鏡餅こけしを作ろうとして、段の数を間違えソフトクリームこけしが誕生したという秘話にへえ!と声が上がりました。

写真07

こけしの色に斬新な色を取り入れるところに輝幸さんの別の一面を感じます。

一日のスケジュールの中に遠距離恋愛中の婚約者さんの電話タイムが…今年ご結婚されるそうです。照れくさそうに話す姿にこちらも幸せな気持ちに。

ある一年のお話の中で、“こけし作りの道具を作る”ための道具を紹介していただきました。輝幸さんは鍛冶仕事もなさいます。台所にあるピーラーを大きくしたような道具。
送風機は手作り。

写真08

それから、地元の消防団に所属しているというお話も。
事前取材に伺った前日には、立て続けに二度(!)も出動があったそうです。
当たり前のこととして暮らしておられる輝幸さんが眩しく見えます。
他にも地元の町おこしイベント「日本ことは遊び回文コンテスト」の実行委員を務めるなど、こけしの向こう側にある作並という地域での生活が見えた場面でありました。

5月はイベントが目白押し。こけし祭り以外では仙台市で行われる青葉まつりのキャラクターである「すずのすけ」のこけし制作をされたそうです。写真を見せていただきましたが、
「これはボツになっちゃったんだよねー。もっとこけしの要素を取り入れたほうがって言われて」
と輝幸さん。すずめとこけしの融合とは?完成品は、青葉祭りで披露されます。

写真09 写真10

プロジェクト匠+α 宮城のものづくり展では、鉄アレイならぬこけしアレイの写真を
見せていただきました。仲間からのアドバイスで作ってみたそうです。

続いて人生についてお話を伺います。
平賀一族は明治時代に岩手から作並に移って来たそうで、お祖父さま・お父さま・叔父さまが代々工房の仕事をされていました。
初孫として生まれた輝幸さんはミニカーが好きで、近所の子供たちと群れになって補助輪がついたままの自転車を乗り回していたそうです。

小学生になると隣家のおじさんの材木の皮むき作業をお手伝い。頑張り過ぎて腹筋を痛め、家族を心配させたことも。
近所のホテルの息子さんと一緒になってホテル内のおまんじゅうを食べたり、エレベーターで遊んだりと、やんちゃ少年でした。

中学生になると腰痛持ちの父に代わって運搬作業をこなすように。とにかく食べることが大好きで太っていたそうです。

高校を1年で中退してこけし工人の道に進みます。
これしかない、という想いで。初めは旋盤(せんばん)作業ばかり。
一日の作業が終わって夕方になると、友達がバイクで迎えに来て遊びに出かけたそうで、おしゃべりしたり、レースの真似事をしたり。

その後工人となり、こけし会の依頼を受けて販売を行ったり、津軽工人フェスティバルに参加して実演をしたりと、活動の幅を広げていきます。
系統の垣根を越えて若手工人有志で結成された美轆会に入ったことで作品的にも人間的にも変わったそうで、「こけし、かだる?」第一回ゲストの弥治郎系新山吉紀工人や遠刈田系の佐藤保裕工人には道具の作り方や仕事以外のこともたくさん教えてもらったそうです。
師匠である謙二郎工人、謙一工人から学んだことは?と伺ったところ、
「なんだろなあ~。」
ど忘れしたようだったので、こちらから「口でこけしはつくらんねえ」と打合せのときお聞きしたお言葉を申し上げると、
「ああ!そうだ!何度もそれ言ってた!」
この自然体なところも魅力。

写真11

斬新なカラーのソフトクリームこけしや消防団ネームプレート、すずのすけに、こけしアレイ。このような作品の作風と輝幸さんのお人柄となかなか結び付きません。
なんともいえない心地よい違和感とでもいいましょうか?
可愛らしさの奥に潜むギラリとしたものこそが、輝幸さんの作品の魅力に思えてなりません。
自分からこうしよう!と進むのではなく、いろんな人に助けられてここまで来たとおっしゃいます。
10代でこけしの世界に入り進んできた道のりに、穏やかな性格の中にある強さを感じずにはいられません。

 

今後の展望を伺うと、
「今の自分の立場で言うのはまだ早いし、何年後になるかわからないけれど、自分の子供や、やってみたいという人にこけしの指導もしてゆかなければと思う」
この言葉に深く頷くこけし愛好家先輩の姿。これこそがこけし好きの人達の集う場なのだと実感した次第です。

写真12

そうは言っても「こけし、かだる?」はこけし界のドアの前で入ろうかな?どうしようかな?と迷っている方も大歓迎です。
こけし歴が浅くても、マニアでなくともよいのです。
こけし!と騒いでいる人を見るのが面白いと思う人もよし。
「可愛いね」「それ、いいね」という想いを互いに語り合う場です。
ぜひぜひ、お気軽にご参加ください。

 

報告:こけしぼっこ

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