〈3.11以降〉読書会-震災を読み解くために-第22回
■ 日時:2015 年 3 月 22 日(日)17:00−19:00
■ 会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
■ 参加無料、申込不要、直接会場へ。課題本をご持参ください。
■ 問合せ:philcfsendaiaw@gmail.com (綿引)
■ 主催:せんだいメディアテーク、てつがくカフェ@せんだい
■ 助成:一般財団法人 地域創造
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この「読書会」について
「読書会」は、あるひとつの本を取り上げ、それを参加者みんなで一緒に読んでいくものです。この読書会では、ほかの人々と共に読むということを最大限活かし、ひとつの本に対する人々の多様な「読み方」を大切にします。そうして参加者どうしが協力し合い、触発し合って、〈震災〉という出来事を――それを直接に扱う「震災関連書」をひとりで読むだけでは辿りつけないようなところまで――深く「読み解く」ことができるような場でありたいと願っています。
課題本
『聖地Cs』木村友祐著、(新潮社)
※収録作品のうち、「聖地Cs」のみを取り上げます。
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〈3.11以降〉読書会—震災を読み解くために— の進め方
この読書会では、以下のフェーズ(段階)を順にすすんで、何回かにわたってひとつの課題本をじっくりと、深く読み解き対話することを目指します。
なお、ここでの対話は普段近しいひとたちとする何気ない会話とは異なります。それは、会話を下支えし、日常を円滑に進めている“根本的な”事柄にあらためて光を当てる言葉のやりとりです。
・解釈フェーズ
課題本の一部分を音読しながら、著者の主張を一つひとつ、みんなで丁寧に確認し、共有していきます。
・再考フェーズ
解釈フェーズで共有された本の理解を土台に、著者の主張、本で用いられた概念等々を問いなおし、意見を交換し合い、必要に応じて課題本に立ち返っていきます。
・対話フェーズ
最後にあらためて、課題本を読んでわたしたちの心を捉えたものについて、今度はみんなで一緒になって考えます。課題本を読む前には無かった視点と言葉で〈震災〉を見て、考え、話していきます。
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「震災を読み解くために」読書会の理念
この「読書会」は、あるひとつの本を取り上げ、それを参加者みんなで一緒に読んでいくものです。ほかの人々と共に読むということを最大限活かし、ひとつの本に対する人々の多様な「読み方」を大切にします。そうして参加者どうしが協力し合い、触発し合って、〈震災〉という出来事を――それを直接に扱う「震災関連書」をひとりで読むだけでは辿りつけないようなところまで――深く「読み解く」ことができるような場でありたいと願っています。
私たちは、読書会というかたちで本を読むことが、単にひとりで本を読むときには得られないような、格別の効果をもたらすものだと考えます。
第一に、あるひとつのテキストを巡る多種多様な意見や思いに触れることによって、自分ひとりの理解がいかに特殊なものであるかを知ることができます。これを反対から言えば、本を読む営みのもつ豊かさに気づくことができるということです。ふだん多くの人にとって、ひとつの本を巡る解釈について誰かと熱く語り合う機会などそうないのではないでしょうか? そうだとしたら、ふだん自分がどのくらい、特殊な読み方をしているのかもわからないはずです。それは「読みの複数性」と言い表わすことができるような、読むことのもつ豊かさを引き出せていないということです。さらにまた、テキストを共に読むことで、読書会に参加する人々の(ふだんは隠された)多様性や他者性――彼らが自分とは異なる人間であるということ――に気づくことができます。これも日常の当たり障りない会話においては得難い体験ではないでしょうか。
また、第二に、読書会に参加し、他の参加者と協力することによってテキストと真に向き合うことができるというのも、読書会のもたらす効果のひとつです。さらにこの読書会は、「震災を読み解くために」、あくまで〈震災〉という出来事と関連するテキストを取り上げる予定ですから、テキストと真摯に向き合い、共に参加する人々の力を借りながら、「自分なり」を超えた読み方で〈震災〉という出来事を見つめ直すことができるという点にも、この読書会に参加することの意義が見いだせるはずです。
私たちは読書会という読みのかたちがもつ特性を最大限活かしながら、深く〈震災を読み解く〉ということ、また、そのための〈読みの力〉を鍛え上げていくことを理念として掲げ、その実現へと向けた努力を――参加者の方々と共に――重ねていきたいと考えています。
〔 市民団体、震災復興、<問い>をたてる 〕〈3.11以降〉読書会―〈震災〉を読み解くために―第22回レポート
今回はメディアテークで行う読書会の最終回でした。この回も含めここ4カ月は続けて『聖地Cs』(木村友祐著、新潮社)を課題本にしてきました。
まずはこれまでの読書会を振り返るために、本を読んできた参加者同士で感想を述べ合い、互いに意見を交わすことから始めました。その次に物語の全体像を掴むべく、各人が考えたこの小説の「プロット」を発表してもらいました。ここで行ったのは、「この物語はどんな物語か」という問いに一言二言で答えてもらうという、全体像の簡単な要約ですが、それさえも、まさに十人十色といったところでした(詳しくは第20回レポートをご覧ください)。そのあとは登場人物個々人に焦点を当て、彼らがどのような人として描かれているか、また彼らにどんな印象を抱いたのかを述べ合い、話していきました。この段階でもやはり多種多様な見方や意見が出されました。
以上の段階を経て、わたしたちは初めにひとりで読んできたときよりも深く、また複数の視点からこの物語を精読することができました。前回と今回の読書会でしたことは、こうして物語を十分に精読したうえで浮かび上がってくるような「問い」を言葉にしていく作業です。
対話の中では、たとえば次のような問いが挙がりました。
「(小説の舞台、“希望の牧場”の主である“仙道さん”という人物について)普段から商業目的で牛を殺してきたにもかかわらず、被曝したからといって牛を生かすことはギマンではないか?」
「この小説がフィクションとして書かれてあることの意味、あるいは、なぜわたしたちはこの小説がフィクションかそうでないかを気にするのか?」
「小説とは何か?」
二、三番目の問いも面白いものでしたが、ここでは一番目の、仙道さんの行為に対して投げかけられた問いが対話の軸となりました。対話を通じて、結局は仙道さんが被曝した牛を殺さない理由を考えることになりましたが、参加者の回答はまず次のふたつに分かれました。ひとつは、仙道さんは自分(たち)のために、牛を「利用」しているのではないかという意見。たとえば自分たちの窮状を外部の人に訴えかけ、忘れさせないために利用している、という見解です。他方で、震災を通じて「命」への見方が転換し、牛の命そのものを守ろうと、牛たちを生かすようになったのだという意見もありました。この二種類の意見がそれぞれ展開されていったところで、ある参加者から「そもそもなぜ、生きているものを殺さないでいることが問題になるのか」という声が挙がりました。たしかに仙道さんの牛たちへの態度は、「尊厳」といったような、「測りがたい価値」に対するものとは少し違う気もします。それよりもまさに、本文中で仙道さんがそう述べるように、仙道さんの牛への態度は「礼儀」としてのそれであって、なにか当然のことといったニュアンスを感じさせます。だとしたら変なのは、当然のことをする人よりも、当然のことに理由を求める人のほうかもしれません。
とはいえ、ここで出てきた「礼儀」という言葉は、使うのは簡単ですが、あらためて意味を問われると上手く言い当てるのは困難です。そこで対話の最後に、「礼儀とは何か」をみんなで考えることになりました。
この問いへの応答には、
「相手を利用しない」態度
「感謝する・表現する」態度
「敬意を表す作法」
「命を蔑ろにしないこと」
などが挙げられました。
ここでは、「敬意」という語の意味を考えるために「軽視」の意味を考え、それは相手や物を「どうでもいいものとして扱う」態度のことだという意見に辿り着きました。だとすると礼儀とは、相手を「どうでもいいものとして扱わない」ことを含むはずだ、たしかに長く使った服や道具をどうでもいいものとして扱うことを「物への“礼儀”に反している」と言ったりする…というふうに対話は進んでいきました。
しかし、この問いに対する完全な答えが見つかるはずもなく、この思考の流れは時間的制約のために途切れざるをえませんでした。とはいえ4カ月にわたって同じ小説を読んできたからこそ、こうした抽象的な(そして哲学的な)話題でも、自然と入っていくことができました。最後にふさわしく、生き生きとした奥行きのある対話ができたのではないかという感想です。
報告:綿引周(てつがくカフェ@せんだい)
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