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てつがくカフェ

シネマてつがくカフェ第65回「『猿とモルターレ』映像記録から“継承”を考える」

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今回は、映像作品を観て思ったことを語り合う「シネマてつがくカフェ」です。「3がつ11にちをわすれないためにセンター」が企画する展覧会「星空と路–資料室–」の関連企画として、『猿とモルターレ』の映像記録を上映し、 “継承”について考えます。

 

■ 日時:2018 年 3月 10日(土)13:00-17:45
※ 13:00-15:00の時間で『猿とモルターレ』(制作:小森はるか/2017年/日本/110分)の映像記録を上映します。
■ 会場:せんだいメディアテーク 1f オープンスクエア
■ ファシリテーター:西村高宏(てつがくカフェ@せんだい)
■ ファシリテーショングラフィック:近田真美子(てつがくカフェ@せんだい)
■ 参加無料、申込不要、直接会場へ

 

《今回の問いかけ》

-震災という出来事から、私たちは何を・どのように継承していくのか?
2017年3月に茨木市市民総合センターで上演された『猿とモルターレ』は、東日本大震災の被災者ではない砂連尾理(じゃれお・おさむ)が、当事者ではない立場で震災を表現した作品です。砂連尾が震災後に避難所生活する人びととの交流を通じて、非常に困難な状況を経験した人びとの「命懸けの跳躍(=サルト・モルターレ)」を考察し、未来に向けて生きる私たちのサルト・モルターレを模索したパフォーマンス作品である『猿とモルターレ』。今回は、その映像記録を鑑賞した経験から、「私たちは何を “継承”したのか」を対話を通して問うていきます。

「猿とモルターレ」アーカイブ・プロジェクト
西村高宏・近田真美子(てつがくカフェ@せんだい)


*「猿とモルターレ」アーカイブ・プロジェクトとは
『猿とモルターレ』が舞台芸術として試みたことや、作品で協働した出演者や観客と共有した体験を、異なる表現メディアで記録し、アーカイブしてきました。そして、それらの記録をもとに震災の記憶継承のありかたを検証するてつがくカフェやワークショップにも取り組んでいます。

 

◆ 問合せ:mmp0861@gmail.com(てつがくカフェ@せんだい 西村)
◆ 主催:てつがくカフェ@せんだい/せんだいメディアテーク
◆ 助成:一般財団法人 地域創造

 

 

◎関連イベント|朗読+映像ワークショップ
朗読ワークショップでは、瀬尾夏美『二重のまち』のテキストをもとに、さまざまな方法で朗読することで、出来事を経験している人/していない人の声や身体が、出来事を継承していく可能性について考えます。そして映像ワークショップでは、カメラに撮られることによる身体の変化を実際に観察することで、出来事がメディアで記録され、伝えられていくことの危うさや可能性を考察します。

 

■ 日時:3月11日(日)11:00-17:00
■ 会場:せんだいメディアテーク7f スタジオa
■ 参加無料・要申込・先着20名
■ 申込方法2月17日(土)10:00よりメディアテーク企画・活動支援室(022-713-4483)にてお電話で受け付けます。

 

 

◉展覧会 「星空と路–資料室–」
「星空と路−資料室−」では、震災にまつわる様々なことがらを記録してきた「3がつ11にちをわすれないためにセンター」参加者による、震災から7年をむかえる今の記録や試みを紹介します。

 

■ 会期:2018年2月24日(土)−4月22日(日)
9:00-22:00 ※ 3/22(木)はお休み
■ 場所:せんだいメディアテーク 7fラウンジ、1fオープンスクエア(3/7-3/11のみ)
■ 主催:3がつ11にちをわすれないためにセンター

 

 

《てつがくカフェとは》
てつがくカフェは、わたしたちが通常当たり前だと思っている事柄からいったん身を引き離し、そもそもそれって何なのかといった問いを投げかけ、ゆっくりお茶を飲みながら、「哲学的な対話」をとおして自分自身の考えを逞しくすることの難しさや楽しさを体験していただこうとするものです。
てつがくカフェ@せんだい http://tetsugaku.masa-mune.jp

シネマてつがくカフェ第65回「『猿とモルターレ』映像記録から“継承”を考える」レポート



今回のてつがくカフェでは、東日本大震災の被災者ではないダンサーの砂連尾理(じゃれおおさむ)さんが、避難所生活をする人々との交流を通じて創作したパフォーマンス作品『猿とモルターレ』の映像記録を鑑賞し、それぞれが感じたこと、考えたことを対話しました。



今回のテーマが、「 “継承” を考える」ということもあり、伝えることや伝わることについての話題が多く出ました。まずは『猿とモルターレ』のダンスを見ていると、当時経験した身体感覚がシンクロしてくるという声がある一方で、震災と結びつきそうで結びつかない感じがあるという声もありました。そこを突き詰めていくと、伝えるための言葉が解体されダンスという表現になることで、受け手側が様々に汲み取ることができる点が見えてきました。また、継承していくためには、手を伸ばして知りたくなるような、ある種の美しさが大事なのではないかという意見も出されました。

そうしたなかで、『猿とモルターレ』の記録映像を撮影された酒井耕さんから、撮影中は記録者としてその場で起こったことを正確に伝えるため、鑑賞者に自由に見てもらうというより、伝えたい部分が明確に見えるよう撮影したという主旨の発言がありました。しかし、その意図とは異なり、自由にそれぞれの解釈で受け取っていた鑑賞者らの反応に対し、実のところ継承というのは「されてしまうもの」とも考えられるのではないか、という視点があげられました。そう考えたとき、重要になってくるのは、その場を「記録しようとする人」や、それを「受け取ろうとする人」の「態度」なのではないかと。そしてそこから、継承における「伝える側」と「受け取る側」のありようについて対話が進んでいきました。
また、別の方から盆踊りの例があがり、もともとは祈りなど意味があった踊る行為が、現代ではそこに理由がないように、理由のなさという部分も継承の要素に関わるのではないかという意見が出されました。

後半はそれまでの対話から、継承を考える上で重要なキーワードをあげていきました。

・受け取る側/伝える側
・(つくり手の)覚悟、葛藤
・美しさ
・共振
・負荷
・手を伸ばそうとする(距離)
・弱さ
・思いやり

これらのキーワードの中で、特に「受け取る側/伝える側」「共振」に注目してさらに継承とは何かを考えていきました。
まず「つくり手の表現の意図」と「見る側の受け取り方の自由」はニュートラルな関係であることが指摘されました。また、立場が違っても同じ場所にいるからこそ共感や共有できるものもあること、「伝える側」から「受け取る側」への一方通行ではなく、受け取りながら伝えていくことで「継承」がされていくという意見も出されました。そのように互いに作用していく関係を「共振」と捉えました。

最後に、継承とはどのようなものであるのか、今までの対話をもとに参加者がそれぞれにまとめていきました。

継承とは、
・伝える側がいなければ始まらないが、受け取る側が主体となるものである。
・伝える側/受け取る側の互いの葛藤の末に共振が起こるという体験である。
(ただし、手を伸ばそうとする距離によって負荷も生じるもの)
・伝える側/受け取る側の共振である、または予振である。

継承とはどのようなものか、少しずつ輪郭が見えてきたところで終了時刻となりました。
今回の対話を参加者それぞれが持ち帰り、さらに〈継承すること〉について考えを深めていけるきっかけとなればよいと思います。

 

報告:三神真澄(てつがくカフェ@せんだい)

 

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