「震災と教育 第二弾 − 震災から〈教育〉を問い直す」
■ 日時:2012 年 10 月 7 日(日)15:00−17:00
■ 会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
■ ゲスト・ファシリテーター:寺田俊郎(カフェフィロ会員/上智大学教員)
■ 参加無料、申込不要、直接会場へ
■ 問合せ:tanishi@hss.tbgu.ac.jp (西村)
■ 主催:せんだいメディアテーク、てつがくカフェ@せんだい
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震災から〈教育〉を問い直す
2012年7月1日の第12回てつがくカフェ「震災と教育」では、防災無線で住民に避難を呼びかけながら犠牲になられた南三陸町職員のエピソードを検討し、子どもたちに今回の震災という〈出来事〉をどのように教えるべきなのかについて参加者の皆さんとじっくり考えてきました。
そこでは、震災を〈道徳〉の教材として用いることの問題—例えば、どう行動するのが〈正しい〉のかといった教える側の価値観を押し付けてしまう可能性や、〈考える〉契機としての震災教育の可能性について意見が交わされました。さらに〈教育〉そのものが教員の力量や学校という場だけに限定されていることへの違和感なども語られ、〈教育〉の抱える問題が震災という〈出来事〉を通して浮かび上がってきたように思います。
しかし、「震災と教育」をめぐっては、まだ積み残された問題が数多く存在しています。
例えば、福島県内では、文部科学省が小・中・高校生向けに作成した放射線副読本について、放射線が身近であることを強調し、健康への影響を過小に見せるなど内容が偏っているという問題点が指摘され、独自で指導案を検討するなどその対応に追われています。また、教員は放射線教育に関して副読本から逸脱しないよう指導を受けており、指示通りに教えると被ばくに不安を抱く親から非難され、危険性について言及すると苦情が来るなど混乱が生じたといいます。子どもたちに誰が/何を/どのように/教えるのかは重要な問題ですが、そもそも専門家ですら見解が一致しておらず、ましてや一人ひとり〈受け止め方〉が異なる問題を〈教える〉というのは、かなり難しいことのように思われます。
そこで、今回のてつがくカフェでは、こうした〈教える〉ことの難しさや、震災という〈出来事〉から見えてきた〈教育〉にまつわる問題をあぶり出し、〈教育〉そのものについて問い直してみたいと思います。みなさま、どうぞご参加ください。
(てつがくカフェ@せんだい 近田真美子)
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てつがくカフェとは
てつがくカフェは、わたしたちが通常当たり前だと思っている事柄からいったん身を引き離し、そもそもそれって何なのかといった問いを投げかけ、ゆっくりお茶を飲みながら、「哲学的な対話」をとおして自分自身の考えを逞しくすることの難しさや楽しさを体験していただこうとするものです。
てつがくカフェ@せんだい http://tetsugaku.masa-mune.jp
〔 市民団体、震災復興、<問い>をたてる 〕てつがくカフェ「『震災と教育』第二弾 − 震災から〈教育〉を問い直す」レポート・カウンタートーク
「『震災と教育』第二弾〜震災から〈教育〉を問い直す」
10月7日に行われたてつがくカフェでは、7月に引き続き「震災と教育」というテーマのもと行われました。前回のカフェでは、南三陸町役所の女性公務員の話題が中心に置かれていましたが、今回はそこに固着せず、むしろ"震災を教える"とはいったい何なのかについて問い直そうというテーマでカフェが開かれました。
まず初めにファシリテーターの寺田さんから、前回(7月1日)のカフェにおいて論点だったものの、未だ掘り下げられていないこととして2つのことが挙げられました。
1つめは、正解を教える場とされる学校で(?)善悪や道徳の問題を教えることは可能なのか、もし可能だとすればどのようにしたら教えられるのかということです。もう1つは、学校では考えることが大事であるということが暗黙の了解としてあったが、そもそもなぜ考えることが大事なのかということです。
この2つのことを軸に対話を進めることも可能でしたが、震災から離れすぎた話題ということもあり、一旦これらの論点をおいておき、"震災とはどのように教えられるべきか"という問いから今回のカフェは出発しました。
最初に出てきたのは震災を教えるという事に際して、“何が”教えられるべきなのかに関する話でした。3月11日の惨劇は後世に伝えなくてはいけない、教えなくてはいけない、事実を正確に教えるべきだ、など様々な意見が出ました。寺田さんは、これらの意見は被災地であるこの東北の地で生きていく術について考えている点で共通していると指摘しました。確かに、これから東北の地で生きていく子どもたちに教えるべき事と考えたら最初にこういった考えが出てくるのは当然かも知れません。では、いったい、私達は“何を”教えるべきなのか。それ以前に、何を教えられるのか。ここで出されたのは、何かを教えるということは、その前にまず何かを学んでなくてはいけないはずだ、という意見です。
私達は震災からいったい何を学んだのか。前半に出されたこの問いは、おそらく会場の全員の心に最後まで引っかかったままだったと思います。しかし、あまり深くまで掘り下げられることはありませんでした。
議論は、子どもたちに何を教えていくべきなのかということから、今の子ども達に対する安全教育のあり方、また、今現在の教育現場の問題へと移っていきます。 これからの安全教育はもっと自分で考えることを教える必要があるといった意見や、学校でだけ教えきれるものではなく、家庭の役割を再認識すべきだといった意見。逆に、現代の家庭にその役割は担えないといったような意見も出されました。白熱した議論は、学校のあり方、学校と家庭の役割についてまで広がっていきました。
そんな中出てきたのが、「震災を乗り越える」という視点です。安全教育にしろ、単に震災を伝えていくにしろ、震災という喪失を語る作業の中で震災を内面化し、震災を乗り越えていく過程において、教育がその役割を担い得るのではないか。震災を乗り越えるには時間の経過だけではなく、死と向き合うこと、死者を想うこと、すなわち弔いの行為、追悼の手順がやはり必要だ、そんな意見でした。
この他にも、まだまだ掘り下げられる話題が沢山残ったままでしたが、残念ながらここで時間切れとなってしまいました。
震災から“何を”学び、“どのように”教えていくか。今回の議論では、震災から教育を多くの視点で問い直すことができたのではないかと思います。前回のカフェでも出されましたが、学校教育ではすべてを評価の対象にする必要があり、答えの出ない議論は好まれないという話もあります。今回の議論も、様々な意見が飛び交い白熱した議論になりましたが、これといったはっきりした答えの出ないまま終了となりました。しかしながら、このように答えの出ない哲学的な議論こそ、学校にも必要なのではないでしょうか。
寺田さんが最後に述べたように、ここで出された論点のうち、掘り下げられていないたくさんのものを持ち帰り、もう一度自分で問いなおしてみるとまた新しい発見があるはずです。
報告:菅原翔平(てつがくカフェ@せんだい)
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板書のまとめ
黒板1枚目
黒板2枚目
黒板3枚目
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◎「 『震災と教育』第二弾 − 震災から〈教育〉を問い直す」カウンタートーク
カフェ終了後に行ったスタッフによる延長戦トークです。以下より視聴できます。
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