考えるテーブル

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いま、貞山運河を考える

2012年 第3回「貞山運河の『これからの運河活用と防災』を考える」

■ 日時:2012 年 9 月 26 日(水)18:00−19:30
■ 会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa

参加無料、申込不要、直接会場へ

■ 問合せ:tel・fax 022-222-0250(上原)

■ 主催:せんだいメディアテーク/いま、貞山運河を考える会

 

 

運河を活用した防災はどうあるべきか?
防災を考える時に、運河の活用や景観を考えなくてよいのか?

 

 

被災地を貫く貞山運河(ていざんうんが)。

木曳堀、新堀、御船入堀、東名運河、北上運河からなる貞山運河は、

旧北上川河口から阿武隈川河口までを結ぶ日本一長い運河であり、
慶長2年(1557年)から明治17年(1884年)にかけてつくられた、
宮城県の誇る歴史遺産です。
かつてこれらの運河は、それぞれに異なる役割を持ち、藩米や木材などの輸送のために、また野蒜築港運用のために開削されたものでしたが、近年では、農業用排水路、ボートの係留地として、またサイクリングなどレジャーに活用される、地域住民のいこいの場でした。

これまで貞山運河に関わりのあった人、

震災後、初めてこの場所が気になりはじめた人、
それぞれの立場から、いま、貞山運河に思うことを話しあってみませんか。

2年目となる今年は、各回テーマごとに考えを深め、市民の声をまとめていきます。

※ここでいう貞山運河とは、北上運河、東名運河、御船入堀、新堀、木曳堀を指します。

※この企画は、ヒアリングした意見を集約し、自治体に提言する案をまとめるものではありません。
※イベント当日は、イベントのレポートとしてウェブサイトに公開するために、会場の様子を写真撮影します。

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第3回 いま、貞山運河を考える「貞山運河の『これからの運河活用と防災』を考える」レポート



せんだいメディアテークの“考えるテーブル『いま、貞山運河を考える』の第3回が9月26日(水)に開催され、約30人の皆さんが、「貞山運河活用と防災」というテーマで3グループに分かれて話し合いました。

******** はじめに **********

■ “考えるテーブル”では、震災復興や地域社会・表現活動について考えていく場として主催者や  ゲストだけが話すのではなく参加者の皆さんも対等に話せるような場を創ろうという趣旨で設けている。その中で、『いま、貞山運河を考える』は昨年震災後メディアテークが再開した時からやってきているもので、宮城県沿岸部にある貞山運河を貴重な歴史遺産として考えていきたい…と、この場を設けた。今年度は5回に分けてその都度テーマを設け皆さんと一緒にいろいろなアイディアを出していこうということで、今日は『貞山運河活用と防災』というテーマで話をしたい。この場で出た話をテキストにまとめ、考えるテーブルのホームページなどで発表していく。その際、個人名などは載せないよう配慮したい。
■ 今日のテーマは“防災”。“これまでどんな防災機能を果してきたか?”“運河を活用していくにはこれから防災をどうしたらいいか?”などという点について広く皆さんの意見を出してもらいたい。

******** 進め方のルール *********

■ マイクを持った人が話す。 ⇒ ひとりの話を皆が聴く。
■ テーマに沿って話す。   ⇒ 今日は『貞山運河活用と防災』。
■ 多くの人の意見を集める。 ⇒ 出された意見をまとめてメディアテークから発信する。
■ 話し足りないときは…。  ⇒ テーブルに直接書き込んだりメモやアンケートに記入したり…。
■ 部数が足りない資料は…。 ⇒ “回覧”で…。
■ 今日の進め方 ⇒ 前回の話し合いの内容報告
話題提供
3つのテーブルに分かれての話し合い
各テーブルの内容発表
全体討議

******** 前回の報告 *********

■ 配布資料及びメディアテークホームページ『考えるテーブル「いま、貞山運河を考える」第2回「貞山運河の環境と自然」』参照。
初めは人工物であったが長い歴史・時間の中で自然と一体化し二次的自然となっている…など。



******** 話題提供 [1]  『宮城県内各被災自治体の復興計画』*********

■ 震災復興計画の整理:

各自治体ごとに策定された復興計画の内容はそれぞれ異なるが、もちろん“防災”については全ての自治体で記述している。
レベル1(百年~百五十年に一度の津波):生命・財産を守る=“防災”
レベル2(千年に一度の大津波):人命は守るが経済的損失については軽減のみ=“減災”

■ 堤防についての国の考え方:

(注:“TP”とは“海抜高度”“標高”の意味)

レベル1の津波に対して⇒TP7.2mの海岸防潮堤(但、“避難”を前提)

 

■ 堤防についての県の考え方:

国の『レベル1の津波に対する⇒TP7.2mの海岸防潮堤』に加えて、レベル2の津波に対する⇒   県道嵩上げ・貞山運河堤防など“2線堤”による多重防御。(但、“避難”を前提)
貞山運河復旧計画(県河川課ホームページ 2012.5月現在):北北上運河 TP1.53m、南北上運河(東松島付近)TP4.5m、北上運河 TP4.5m、東名運河 沈下分嵩上げ程度、砂押川TP5.0m、南貞山運河 TP2.4m、中貞山運河 TP3.7m、北貞山運河 TP3.7m・・・・・・など、地域によって堤防復旧の高さはいろいろ。

■ 堤防整備の考え方:

震災前には“水門を閉じて被害を防ぐ”考え方だったが、津波襲来時に水門が動かなくなり内陸に溜まった海水や雨水が排水できなくなったことを教訓に、“水門ではなく堤防で守る”方針とし”排水機能を持った壊れない堤防“をつくる。

■ 貞山運河の防災機能:

貞山運河は津波に対する防災の役目を果たしたと言われている。本来は貞山運河は水運を目的として築造されたものだが、海抜1m程度の仙台平野の水田の排水を受け持ち稲作を可能にしたように、“内陸に溜まる水を排水する”機能も持っていた。しかし、震災以前から仙台平野では20~30年に1回は大規模な洪水被害に遭うことに悩まされており、貞山運河への排水能力をもっと高めたいとの要望もあった。津波だけでなく“内水排水”機能にも注目すべきだ。

■ 宮城県河川課から聞いた話:

“減災”効果があったのか?⇒『あった』と考えているが、具体的には地域により状況が異なるので、シミュレーションで確認する業務を専門業者に委託予定で年内には結果が出るはず。
貞山運河を活用した地域のあり方⇒地域・環境により内容も異なるが、景観・暮しも含め前向きに検討していきたい。



******** 話題提供 [2]  『“貞山運河の魅力再発見協議会”について』*********

■ 経緯:

島国日本で海洋資源を利用した新しいビジネスの形を模索する中、“貞山運河”という地元の地域 歴史遺産に注目してH15に活用研究に着手。4年かけてH19に『提言書』にまとめた。
ちょうどその年の1月、国土交通省港湾局で“運河の魅力再発見プロジェクト”の公募があり、   応募したところ全国8ヶ所の中のひとつとして第1回の認定を受け、初年度250万円の予算が付き貞山運河のHPを作成、活動母体として沿線7市2町の自治体と民間団体9者計18者で“協議会”を結成、貞山運河を魅力あるものとして創っていく事業が始まった。
その2年目以降の活動の中で、岩沼・仙台・多賀城でリレーシンポジウムを開催し、多くの方々に貞山運河に対する思いや考えを聞かせていただき、その後石巻・東松島での開催を予定していたが、その矢先に震災を受けてしまった。

■ 『マスタープラン』

貞山運河は歴史遺産・防災・環境保全・観光など多くの側面を持っており、それぞれの地域で息づいているが、それぞれ勝手にバラバラ動いたのではかえって魅力を失ってしまう…との危機感を抱き、シンポジウムとともに、“貞山運河を利活用するための指針”としてマスタープランを作ることにした。現在、全体の9割、第4章までできているが、昨年の震災で内容を大きく変えざるを得なくなった。現在の内容は概ね次のとおり。
第1章:貞山運河の概要
貞山運河の現状と課題(古い歴史・日本一の総延長・多様な表情)、沿岸流域地域連携の必要性、貞山運河と行政、環境保全と自然生態系の保全、ハード整備の必要性、沿岸市町村の枠を超えたブロックづくり、産学官民の連携による魅力づくり、情報発信のありかたと情報媒体…
第2章:貞山運河利活用の取組み方針
利活用の方針=環境保全と自然生態系の保全を踏まえた観光振興の取組み、地域特性を活かし 地域と一体となった取組み、地域ごとの活動と連携・協働の取組み、情報発信と地域振興…
整備方針=環境保全と自然生態系保全のための整備、ハード整備とソフト整備、情報発信の方針、リレーシンポジウムの開催、コンテストキャンペーンによる情報発信(絵画・写真・作文など)、貞山運河マップの作成(旅行ガイドブック・HPの作成)…
第3章:流域連携・広域連携・産学官民の連携
第4章:推進体制…(協議会各自治体が被災しており、担当職員多忙のため現在休会状態)

■ “防災”について

防災機能を持った運河の整備:河川管理者には、拠点整備を行うとともに、船舶の安全航行確保のため、さらに、大型化した船舶に対応した水位確保のために、ヘドロや堆積土砂の撤去や岸壁と航路及び後背地の確保を行うことが望まれる。その結果として環境保全のための水流の復活も可能となる。このほか、不法係留の船への対応も課題だ。
治水安全向上のためには、河川管理者が行う護岸整備と併せて、その前後に親水護岸整備を行い、地元自治体やNPOなどが積極的に管理に関わるなど共同で親水空間を演出していくことが望まれる。

******** A・B・C各テーブルでの話合い 及び 全体討議 *********

(まず3つのグループに分かれて話合い、その後各グループからの報告がなされ、全体での討議が  行われたが、この記録の中では、スペースの関係上“話題にのぼったテーマ”ごとに集約・編集して記載した)



■ 津波に対する防災

<松林>

●海岸の松林のおかげで建物が流されずに済んだという津波体験から言っても、防災林としての 松林の再生を希望する。
●松の木が流され二次被害を起こしたのは地下水位が上がっていて松の根が浅くなったことも?
●松林に人が入らなくなって管理が不十分になったために松の根の生育が妨げられた。
●松だけでなく多種類の樹木を貞山運河堤防沿いに植林し公園化することも考えたい。
●堤防に樹木を植えるのは異物を入れることになる。桜も同じだが、堤防の幅を広げ安全な部分に植えるのはいいだろう。
●なぜこれまで“松”だけが植えられてきたのか?
●松は塩に強いということで植えられたと聞いたが、実際の荒浜の松林は現在は他の樹木も生えていて半ば雑木林化していた。
●海岸部では松くらいしか育たない。松が定着した後、他の樹木も育つようになる。
●津波を完全に防ぐことは困難。松林など“自然の構造物”の力を使うべき。
●所属する団体では植林用のマツやタブの木を用意している。防潮林の植林など連携していきたい。

<2011.3.11での貞山運河の防災効果>

●昨年の津波の際、貞山運河はどのような効果があったのか?
●県も”効果あり”とはしているものの、はっきりしないのでシミュレーションで確認するとのこと。
●津波のスピードを遅らせるような“減速効果”はあったろう。
●津波の第1波が貞山運河で1回落ち込んで弱まったうえ横に流れ時間も稼げた。引き波の時にもそこでまた一回落ちて助かった人もいた。
●岩沼より南、運河が無い所と北の運河がある所では被害の出方が違うようだ。
●しかし、閖上のように“貞山運河の水が引かない限り津波は来ない”との思い込みで避難が遅れてしまった例もある。“減災”どころかかえって被害を大きくさせたものだ。
●電源喪失で貞山運河へのポンプ排水ができなかった。昔は手動運転だったが今は全て電気で制御しており停電によって機能しなくなる。

<防潮堤>

●六郷七郷など海のそばの広大で平らな仙台平野の田んぼは、全国的にも魅力ある貴重な存在で、その田んぼを守るには内水の排水も重要。それをやらないと稲作ができない。
●明治の頃、仙台駅東に下宿していた島崎藤村が毎日荒浜の潮鳴りを聴いていたとのこと。潮の音の変化を聴いたり波が引いていくのを見たりする自然からの警告への注意が重要。高い海岸防潮堤で海が見えなくなってしまう危険性もある。松に当る風“松籟”を聴く風雅さも失ってしまう。コンクリ-トの防潮堤でかえって海岸線が浸食されるおそれもある。 防潮堤”ではなくむしろ“防潮運河”を提案したい。
●“海が見えなくなってしまう”ことによる危険性の方が大きくなるかもしれない。
●コンクリ-トで堤防を造っても千年ももたず、今回の例を見ても弱点がある。自然のままで  何とかできないか?
●“自然のままに”とは言っても、友人を亡くした経験から言うとそのままにしておいて死者が出るのは忍びない。
●防潮堤を造るなと言っているのではない。それを越えたものを防潮林のベルト地帯で守る “多重”防御でやるべきと言っている。

<これからの貞山運河の防災>

●海貞山運河の防災に対して各市町村ばらばらなうえ、県の考え方も一貫していない。場所ごとの違いはあるにせよ県レベルでの調整が必要ではないか?
●海岸防潮堤は百年に一回程度の津波や高潮に対応するもので国が対応。県河川課は“貞山運河の復旧”で、元々の高さが場所ごとに違うから以前より多少高くなるところもあるにせよ基本的には元に戻す“復旧”が原則。その“復旧”の形は場所ごとに異なり、各自治体それぞれの地域性があり各自治体の防災計画もそれぞれ異なる。新たな要素を付け加える“復興”はこれからの課題だ。
●“施設を使うことが重要”とのことだが、“防災”あってこそ使うことが可能になる。魅力が   あっても、『使って大丈夫、安全だ』…との前提がないと使うことはできない。
●津波対策用の堤防や護岸工事という方に金を使われると、貞山運河の昔の形が変ってしまう。“水路”や“洪水時の水の流れ”としては以前から機能していたが、“津波を防ぐ”目的で改造し始めると大きく変ってしまう。“防災”とは別な形で、自然を残すイメージを大切にしたい。
●“貞山運河で津波を防ごう”というのではない。たまたまあった貞山運河が津波防災の役割りも果したというだけ。貞山運河で津波を防ぐということに集中してしまうと具合が悪い。大きな津波を防ぐのは防潮堤なり嵩上げ県道なり盛土なり他の方法で対応すべきで、そういうことを十分やったうえで、貞山運河は“防災機能という面も兼ねた歴史遺産”として残すべきだ。
●安全確保のためには“浚渫”も必要だろうが、ヘドロも含めた環境の中で魚などの生物が生息していた。浚渫などであまりきれいにしすぎると生態系が変ってしまい生物が生きられなくなってしまうことにも配慮が必要だ。



■ 海岸浸食に対する防災

<仙台湾における砂浜海岸浸食>

●遠く離れた地域での工事の影響が仙台湾での砂の移動に関係し、長い時間をかけて砂浜海岸を浸食してきている。海岸での防災にも配慮する必要がある。
●浸食から砂浜を守る“海岸保全”の問題も重要だが、荒浜などの海岸の砂浜が浸食されているかどうかの検証は長い時間スパンできちんと行う必要がある。

■ 洪水に対する防災

<雨水排水施設としての貞山運河>

●昨年の津波災害の印象が強く“防災”というと津波を思い浮べがちだが、貞山運河にとっては“雨水排水”、大雨時の洪水を防ぐ機能が重要だ。荒浜では震災前から大雨の際貞山運河に排水できず沿線の住宅がたびたび浸水していた。 仙台市の沿岸部一帯が災害危険区域に指定され 住居の建築が禁止されたとはいっても無人の地になる訳ではない。これからもきちんと雨水排水機能を確保するよう配慮願いたい。
その際、今回の津波の後、荒浜の海岸部に出現した“水路”に注目してほしい。津波の引波によって砂浜がえぐられて、荒浜集落の北側に貞山運河から海に直結する水路が出現した。これは、貞山運河が造られる明治以前にあった“赤渋堀”という名の水路の河口が再現されたものである。
震災前の仙台平野の雨水排水は広い仙台平野の雨水が全て貞山運河で受止められ、北の七北田川、南の名取川、2つの河川の河口経由で海に放流されてきた。これはかなり無理があり、その結果、荒浜や南蒲生での排水不良・浸水という形で現われていた。たまたま昨年津波後の強い引波によって強引に作られてしまったとはいえ、自然の法則から言えばむしろそちらの方が“自然”な形の“仙台平野中央部から直接海に向かう流れ”に注目すべきだ。
今後貞山運河に設けられる水門によって荒浜地区の排水が遮断されてしまう危険性もあるという。
現在県と仙台市とで雨水排水計画について調整中と聞く。七北田川・名取川のほか第3の排水先、昔の“赤渋堀”のように、仙台平野を横切る貞山運河の中央部から海に直結する排水路について考慮願いたい。
●常時設ける水路だけでなく、S61の大雨時に吉田側の堤防を切ったように、非常時に緊急避難として“ヒューズ”的に堤防を切ることはあり得るだろう。“歴史遺産”とはいっても後で修復することは可能だ。
●災害の拡大を防ぐ…という対応だろう。



 

報告:いま、貞山運河を考える会

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