2013年 第1回「いま、貞山運河を考える『を考える』」
■ 日時:2013 年 9 月 28 日(土)14:00−16:00
■ 会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
■ 参加無料、申込不要、直接会場へ
■ 問合せ:TEL/ FAX:022-222-0250(上原)
■ 主催:せんだいメディアテーク、いま、貞山運河を考える会
■ 助成:財団法人 地域創造
貞山運河は宮城県の誇る歴史財産です。
これまでの「考えるテーブル いま、貞山運河を考える」では、2011年7月から2012年12月までに全7回開催し、のべ200人以上の参加があり、さまざまな意見やアイデアが寄せられました。
今回は、この貴重な意見をもとに、防災、暮らし、農業、漁業、産業、自然、景観、歴史、文化など、あらゆる視点から、貞山運河を後世に残すための利活用の方策について、みなさんとともに考えます。
【関連情報】
『貞山運河レポート − 2011・2012 いま、貞山運河を考える会全記録』が完成しました
【関連企画】
【展示】いま、貞山運河を考える(2013 年 9 月 7 日(土)− 10 月 27 日(日)開催)
貞山運河とは
木曳堀、新堀、御船入堀、東名運河、北上運河からなる貞山運河は、旧北上川河口から阿武隈川河口までを結ぶ日本一長い運河であり、慶長2年(1557年)から明治17年(1884年)にかけてつくられた、宮城県の誇る歴史遺産です。開削当時は、藩米や木材などの輸送や、野蒜築港運用のために利用されてきましたが、近年では、農業用排水路、ボートの係留地として、また、サイクリングなどレジャーなど地域住民のいこいの場として活用されてきました。東日本大震災後は、その復興計画や利活用について、改めて注目が集まっています。今年5月には、宮城県によって、「貞山運河再生・復興ビジョン」が策定されました。
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〔 地域社会、市民団体、貞山運河、震災復興 〕
2013年 第1回いま、貞山運河を考える「いま、貞山運河を考える『を考える』」レポート
2011年から2年間継続してきた考えるテーブル「いま、貞山運河を考える」の活動報告展示を7f南側のラウンジで、約2ヶ月に渡り行いました。その展示会期中に、会場にお越し頂いたみなさんとこれまでの2年間を振り返る場を設けました。今回で8回目の開催でしたが、初参加の方もいたのには驚きましたし、皆勤賞で毎回来てくださった方もいらっしゃいました。
まずはみなさんに「貞山運河レポート −2011・2012いま、貞山運河を考える会全記録」をお渡しし、趣旨を説明した後、考えるテーブルから離れ、参加者のみなさんと一緒に展示をみて回りました。
その中から、個人的にも印象深く思っていた、西大立目祥子さんが紹介してくださった戦前の荒浜小学校の児童による作文『テイザンボリ』(レポート全記録P.42参照)を紹介したり、2012年の最後の回で参加者のみなさんから寄せられた貞山運河の復興計画への提案を紹介したりしました。
【「貞山運河を考える」をふりかえる】
その後、考えるテーブルに戻りあらためて、意見を出し合いました。そのなかで、「復興を急がずに、自分たちのペースで検討しながら進めていく必要がある」とか、「<造る側>からだけでなく<使う側>からも意見を出さないといけない」とか、「水辺に暮らし、シジミ採りや松籟など貞山運河から恩恵を受けてきた身としては、防災教育も大事だけれど、その前に親水教育もやっていきたい」など市民の方々ならではの意見が活発にやりとりされました。
また、震災以前から貞山運河に親しみ、貞山運河流域を何枚もスケッチした絵はがきを持ってこられて、貞山運河のある風景の魅力について語ってくださる方もいらっしゃいました。
これまでに寄せられた意見を振り返るなかで、今回あらためて「貞山運河の復興」を考えたとき、まずは現地に行って、歩いてみて、貞山運河がつくり出す親水空間を楽しむことから始めたら良いと私自身も考えるようになりました。たとえば、昔あったサイクリング道や釣りなどのレクレーションでも良いと思いますし、計画ありきではなく、そのように楽しみ親しむなかで、利活用を考えていっても良いのではないかと思います。
また、貞山運河の近くにある小学校では、貞山運河について学ぶような風土記を教える授業がもっとあっても良いのではないかと思いますし、子ども達にも、水に親しみながら育ってほしいと思います。もちろん親しむなかで、良い部分だけでなく、水の怖さとか、注意しなくてはいけないことなども感じてくると思いますし、それこそが防災教育にもつながっていくと思っています。
その後も私は、岡田地区(仙台市宮城野区)の方と一緒に、貞山運河周辺を歩いてみたりしましたが、昔、湿地だったところが、今回の津波により再び湿地となりたくさんの水辺の生物が戻ってきていることを再確認しました。自然の回復力は逞しく、植樹しなくとも、その土地にあった植物がよみがえってきていたのです。それを人工的にこわすのではなく、それを活かした環境と景観をもう一度取り戻すことが、ここからできるのではないかとも思います。自然からどう学ぶかということも、忘れてはならない視点だと思います。
またこの岡田地区の住民の方で舟を持っている方と知り合ったので、乗舟させてもらい貞山運河をいつか水の上から眺めてみたいと思っています。このように、地元の人と一緒に歩いてみるとたくさんの発見や視点があり、これらを活かす復興のかたちを住民と協働で考えていく重要性を感じました。そうしないと、この素晴らしい歴史遺産が、誰も親しみを覚えない形骸化したものとなってしまいます。
「防災」や「復興」はもちろんですが、その前に「貞山運河」を愛してきた者たちとして貞山運河に親しむアイデアをいろいろと出していきたいという市民の方々が、考えるテーブルに集まり色んなアイデアが寄せられたのは、個人的にもとても興味深いことでした。また、貞山運河沿いの地区の人たちは、震災からの様々な復旧過程のなかで忙しくしていたので、ようやくこれからじっくり話がしていける状況です。ですから、2011年からまとめてきたレポート全記録が、その方々の話し合いを進める一助になるのではと思います。
【ここから考える、市民活動のイメージ】
私はこれまで造園の専門家として公園緑地などに関わってきましたが、60歳になる頃「なにか違う」と思いました。そのとき、「せんだい市民の森を創る会」というボランティア活動に一市民として参加してみました。他の市民のみなさんと一緒に森の手入れをやってみたときにこれまでの仕事のイメージが変わりました。それはどういうことかというと、「<どうつくるか>よりも、<どう使うか>が大事」だということです。以前までの私も含めて専門家はすぐにつくりたがるのですが、それよりも使い方を考える方が大事なのです。主役はあくまでも使う人(市民)です。その人たちの意見を反映させないと、つくったのはいいけれど、使われないことが多い。そう気づいてからは、ドイツのIBMエムシャーパーク・プロジェクトなど、あちこちみてまわり、専門家としての自分の意見や考えを変えるきっかけになりました。
(ドイツのIBMエムシャーパーク・プロジェクトに参加する市民)
これからの専門家はもっと知恵を出して、使い手となる市民の声をどのように聞き、計画に反映させられるのか仕組み自体を模索していく必要があります。そういう意味では、今回の「考えるテーブル」のように、都市計画先行や、専門家一人の頭の中が具現化するような復興計画ではなく、使う側の市民の声がたくさん集められたのはひとつの大きな成果だといえます。自分の専門以外の本を読んだり、専門外の人の話を聞いたりすることは必要で、そういう意味では、さまざまな人が集まって話をする場がもててよかったと思います。
今後は、このように集まった市民目線の意見を、復興計画に組み込んでもらうように、各所に働きかけていきたいと思いますし、ここから生まれた動き自体がひとつの市民活動になっていくと思います。
報告:上原啓五(「いま、貞山運河を考える会」代表)
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