考えるテーブル

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いま、貞山運河を考える

2012年 第2回「貞山運河の『環境と自然』を考える」

■ 日時:2012 年 7 月 18 日(水)18:00−19:30
■ 会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
■ 参加無料、申込不要、直接会場へ

■ 問合せ:tel・fax 022-222-0250(上原)

■ 主催:せんだいメディアテーク/いま、貞山運河を考える会

 

 

被災地を貫く貞山運河(ていざんうんが)。

木曳堀、新堀、御船入堀、東名運河、北上運河からなる貞山運河は、

旧北上川河口から阿武隈川河口までを結ぶ日本一長い運河であり、
慶長2年(1557年)から明治17年(1884年)にかけてつくられた、
宮城県の誇る歴史遺産です。
かつてこれらの運河は、それぞれに異なる役割を持ち、藩米や木材などの輸送のために、また野蒜築港運用のために開削されたものでしたが、近年では、農業用排水路、ボートの係留地として、またサイクリングなどレジャーに活用される、地域住民のいこいの場でした。

これまで貞山運河に関わりのあった人、

震災後、初めてこの場所が気になりはじめた人、
それぞれの立場から、いま、貞山運河に思うことを話しあってみませんか。

2年目となる今年は、各回テーマごとに考えを深め、市民の声をまとめていきます。

※ここでいう貞山運河とは、北上運河、東名運河、御船入堀、新堀、木曳堀を指します。

※この企画は、ヒアリングした意見を集約し、自治体に提言する案をまとめるものではありません。
※イベント当日は、イベントのレポートとしてウェブサイトに公開するために、会場の様子を写真撮影します。

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2012年 第2回 いま、貞山運河を考える「貞山運河の『環境と自然』を考える」レポート



今年5月に始まった、せんだいメディアテークの“考えるテーブル『いま、貞山運河を考える』”。その第2回が7月18日(水)に開催されました。
30人の皆さんが集まって、『貞山運河の環境と自然』というテーマについて3グループに分かれて話し合い、最後に、次回以降のテーマ、貞山運河の「防災」「暮らしと仕事」「観光・遊び」「景観」…などを確認してお開きとなりました。

******** はじめに *********

■この“考えるテーブル”では、研究者や専門家などではなく一般市民からより多くの意見を集めていきたいと考えている。去年の論議をさらに発展させ今年も全部で5回予定している。今日は『環境と自然』というテーマで話し合いたい。

******** 進め方のルール *********

■ マイクを持った人が話す。 ⇒ ひとりの話を皆が聴く。
■ テーマに沿って話す。   ⇒ 今日は『貞山運河の環境と自然』。
■ 多くの人の意見を集める。 ⇒ 出された意見をまとめてメディアテークから発信する。
■ 話し足りないときは…。  ⇒ テーブルに直接書き込んだりメモやアンケートに記入したり…。
■ 部数が足りない資料は…。 ⇒ “回覧”で…。
■ 今日の進め方 ⇒ 前回の話し合いの内容報告
貞山運河の現況写真映写
話題提供
3つのテーブルに分かれての話し合い
各テーブルの内容発表
全体討議

******** 前回の報告 *********

■ 配布資料『考えるテーブル「いま、貞山運河を考える」第1回「貞山運河を知る」』参照。前回はグループ分けせず全体で話し合ったこともあって、ひとりひとりの意見を出す時間が限られてしまった。その反省も踏まえ今回はできるだけ多くの方からご意見を出していただくように、グループ分けして話し合うことにした。

******** 貞山運河の現況写真映写 *********

■ 時は昨年震災直後から最近まで、場所は野蒜・東名運河から岩沼・阿武隈川河口付近まで。色の無い荒涼とした風景から緑の草に覆われた運河の土手まで、数十枚の写真が投影された。



******** 話題提供 *********

■ 業務として自然環境調査などを行う中で、環境負荷の小さい暮らしを心がけるようになった。人類が直面している危機的な事態を回避するチャンスは今をおいて無い。地球上の生物が相互依存による多様性を保ちながら環境の中で繋がりをもって生きている。貞山運河も最初は人工物だったが、長い歴史の中で育まれ伝統・景観・文化など豊かな多様性が保たれている。先ほどの写真の中でも、海を背景にしている所あり、田園を背景にしている所あり、海岸線を背景にしている所あり…と、多様な環境を抱えているのが貞山運河だ。そこにいろいろな“つながり”がある。
経済最優先ではなく自分たちの生命の基盤としての生物多様性を持った自分たちの環境、資料の中での『どんな生態系もサービスを提供している』という言葉を忘れないでほしい。

貞山運河を対象に考えた場合、これまでとは違った新たな発想で見直してみることも必要だ。  例えば、『貞山運河の水質が汚い』と言われているのであれば、『川底にたまったヘドロをメタン発酵させガス灯や小規模発電・残渣の盛土材としての利用…などの利活用も可能ではないか。

『あなたにできることをはじめなさい』。…この勇気をもらう言葉を噛みしめたい。

******** A・B・C各テーブルでの話合い *********

■ 貞山運河沿いの自転車道・ウォーキング。松林の中のキノコ・マツタケ・百合。
■ 豊かな植物生育。
■ 最初は舟運目的の運河築造という“人工物”からスタートしたかもしれないが、それ以降数百年にわたって、周囲の海・田園・松林などのさまざまな環境の中、土の堤体ありコンクリートの護岸あり皆が造ってきた。まわりの環境との関係など各地区で豊かな関わりを捉えなおしてみるべきではないか?
■ 子供たちが自然に手や足を突っ込みたくなるような“感性”に訴えられるような環境になれば…。
■ 地元の方からも『あの海岸の松林は俺たちが1本1本植えていったものだ。そうして手間と時間をかけて育ててきたものだ』…との話も聞いた。
■ シジミ漁の漁場としての“貞山堀”でもあった。
■ 最初は人工物でも長い時間の中で“二次的自然”という形で自然と同化してきて、“自然”とか“人工”とかいう区別も意味が無い形になってきている。
■ “自然”という言葉は“人工”との関係で表現されるもので、そこには“人の手が加えられている”との概念がある。全く人の手が加えられていないものは“原野”と表現する。
■ 人間の生活と密接にかかわっている日本の“里山”のような環境も“自然”と考えていい。
■ その意味では、貞山運河も暮らしを支えてきた“自然”と言うこともできる。そういうものを抜きにして貞山運河を語ることはできない。
■ “雑草”とか“薬用植物”とかいうが、『役に立たない植物は無い』との考えもある。貞山運河沿いの様々な環境に合った植物がそれぞれに生育している。それぞれの土地に合った植物が回復できれば、その土地の方々の力にもなれるのではないか。
■ 農業用水の排水先としての“貞山堀”の役割が大きかった。震災後、その機能が十分ではない状態になっている。
■ その意味では“自浄作用”も含め、大きな自然の中での重要なサイクルを担っていた。
■ “貞山運河”という1本の“線”だけではなく、そのまわりに百合が咲きキノコが採れる松林があったり、植物が育ちさらにその背後の平野部には農業を支える広大な田んぼがあり、そういったものを一本の貞山運河が支えている…という絵柄が見えてくる。…



******** 各グループの内容発表 *********

【 テーブルA 】

■ 貞山運河に関係する各関係省庁を合わせたグランドデザインが必要。
■ 防潮堤築造は生活安全優先で環境が二の次になっている。環境に配慮したデザインを考えて。
■ 環境アセスメントでは、自然と折り合いをつけた計画で住民との議論が必要では。
■ 貞山堀や蒲生干潟の再生など、防潮堤や県道嵩上げの中に埋もれてしまわないようにしたい。

【 テーブルB 】

■ 最初は人工的に造られたものでも長い時間をかけてそこで暮らす人々が関わりながら“自然”化してきている。生活と関わってきた貞山運河を残してほしい。
■ 舟が通れるような形にしたらどうか。
■ 短い時間ではなく十年二十年という時間をかけてでも。
■ “環境”というものを各人の生活とどう結び付けて形づくるのか?今はそれぞれの意見を集めることが大事だ。
■ 場所ごとに現場状況が違っている。



【 テーブルC 】

■ Bグループと同じように、初めは人工的に造られた貞山運河が長い歳月を経て“自然”となった。人の手が入っている里山環境も“自然”の概念のひとつと考える。
■ 農業用水の排水先としての機能も重要。



******** 全体討議 *********

■ 地区ごとに異なる貞山運河の状況や役割。長い時間をかけても各地区の特色を活かした復興を。
■ シジミ漁や松林の中でのマツタケ採り、農業用水の取水や排水。地区ごとに関わり方がさまざま。生活背景や活かし方が全く異なる。全長49kmの貞山運河の果たす役割・ダイナミックな生命のつながりが多様であることを実感した。
■ 海岸線の位置が今と昔では違う。常に出入りしていることを忘れてはならない。以前運河沿いにあった石碑や並木も、地域や時代によって風景はみな異なっていることに注意が必要だ。
■ 地域住民の意見を聴きながらじっくりと時間をかけて計画していく…というやりかたもあるが、県の土木部では既に復興計画の図面も作りそのシミュレーションを行うまでになっている。その計画を変えるのが難しいことは確かだが、防潮堤出入口の詳細部分などに関してはできるだけ意見をいってほしいとのことだった。“地域での意見とりまとめ”となると、各地さまざまで難しいところもあるが、このまま黙っていると県の描いた絵のとおりになってしまう。将来のありかたについて提案するなら今だ。
■ 12世紀の中国で描かれた「清明上河図」という絵巻物がある。川のそばで人が暮らし遊んでいる。舟運も盛んで、真中の橋では素晴らしい賑わいで多くの人が集まっている。…これは、現実をそのまま写したものではなく『こういった形で自然と共生したら楽しいね…』というひとつの 理想像を描いたものだろう。
我々も同じように『こういう環境がいいね。ここは桜並木、ここはサイクリングロード、ここは船着き場があって、舟で遊べる、適宜の舟で野菜を売りに来る…』とかいう、そんな“遊べる環境・理想の環境”を絵にしたり言葉にしたり、そんな作業をやっていきたい。
中国のある町ではこの絵をもとにテーマパークを造ったりしているとのこと。(この話題は次回以降の“観光”のテーマかもしれないが…)



******** おわりに *********

■ “専門家の意見”ではなく一般市民による“個人としての意見の集大成”を目指したい。
■ 市民としてのまちづくりの難しさはあるが、素人としての市民の小さい力を集めてこの地道な集まりを応援したい。
■ 公園緑地の専門家としてこれまでやってきたが、60歳を超え今度は使う側の視点で考えたいとこの“考えるテーブル”に参加している。“つまらない復興計画”になってしまわないよう、専門家ではなく一般の市民の声をぜひ出してもらってそれを施策に反映していきたい。
■ 次回のテーマは“防災”。今は“津波に対する防災”にあまりにも偏りすぎている。もっと幅広い視点で考えないと失敗する。地域・世代よってもさまざまに異なる考えをもっと集めたうえでグランドデザインを描き、世界にも恥ずかしくないような計画を作っていきたい。

報告:いま、貞山運河を考える会

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