第38回 「”みんな”の避難所にとっての”自然”って?~震災とセクシュアリティ6~」
■ 日時:2014 年 10 月 26 日(日)14:00-16:00
■ 会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
■ ファシリテーター:房内まどか(てつがくカフェ@せんだい)
■ 参加無料、申込不要、直接会場へ
■ 問合せ:tanishi@hss.tbgu.ac.jp(西村)
■ 主催:せんだいメディアテーク、てつがくカフェ@せんだい
■ 助成:財団法人 地域創造
《今回の問いかけ》
あなたは、「みんな」という言葉を使うときにどのような人たちを思い浮かべますか。ほんとうにそれは「みんな」でしょうか。たとえば、避難所で過ごす中で、セクシュアルマイノリティの方々の苦痛や、見た目にはわかりづらい障害や困難を持っている方々などの苦労への対処は、多く見過ごされてきたという側面があります。一人ひとりの指す「みんな」が異なるのは当然だと思いますので、それを責める言葉を交わしたいわけではありません。ただ、無意識に「みんな」の背景に隠れてしまった人たちがいないかどうか考えてみたいのです。 そして、今まで当たり前のように使う「みんな」という語を問うてこなかったことの根本には何があるのでしょうか。
「自然」という言葉はどうでしょうか。たとえば「それって自然(なこと)だよね」という発言は、時にとても暴力的です。誰しもそれぞれの自然(あたりまえ/ありのまま)を持っていることを、私たちはつい忘れてしまってはいないでしょうか。特にセクシュアリティのように、自分にとっての自然がほかの人にとってもそうであるように思い込んだり、あるいはほかのひとへ権力のように振りかざしてしまったりすることがあるのはなぜでしょうか。
私たちが普段何気なく使う言葉は、無意識に人を傷つけることもあります。それを自覚するため手がかりとして対話を試みても、その対話さえも遠かったのがセクシュアリティというテーマです。対話によって人は必ずしもわかり合えるわけではないけれど、対話から、自分を開く鍵を、自分が見る世界を描き直す新しい色を得られる可能性はあります。どうか2時間、明日への投資として、セクシュアリティと震災、そして自分自身について、一緒に考えていけたら幸いです。
房内まどか(てつがくカフェ@せんだい)
《てつがくカフェとは》
てつがくカフェは、わたしたちが通常当たり前だと思っている事柄からいったん身を引き離し、そもそもそれって何なのかといった問いを投げかけ、ゆっくりお茶を飲みながら、「哲学的な対話」をとおして自分自身の考えを逞しくすることの難しさや楽しさを体験していただこうとするものです。
てつがくカフェ@せんだい http://tetsugaku.masa-mune.jp
第38回 「"みんな”の避難所にとっての”自然”って?~震災とセクシュアリティ6~」レポート
はじめに、ファシリテーターの房内さんから「“みんな”の避難所にとっての“自然”って?〜震災とセクシュアリティ6〜」という今回のテーマを設定するに至ったこれまでの対話の流れについて説明がありました。
このテーマは、前回の「震災とセクシュアリティ5〜これまでの問いを振り返る〜」から導き出された問いがもとになっています。前回の対話では、「避難所における<自然>とは?」という問いが立てられ、また、“みんな”“自然”など定義しにくい語、そしてその解釈から派生して挙げられた“みんなの避難所”という語について、さまざまな意見が交わされました。そこで、今回はその問いと語を引き継ぎ、より深く考えるべく対話を進めていきました。
対話の冒頭で、テーマを考えていく上でどのように言葉の意味を捉えるかという話題になり、「“避難所における<自然>”を問うのは何故か?」「”みんな“”避難所“”自然“とは何なのか?」というふたつの意見が挙げられました。
ここから、テーマに組み込まれている“みんな”や“避難所”という語それぞれに焦点を当てた意見が出され、対話が広がっていきました。
「避難所を今後どのように設計するか」という問題提起から、避難所とはそもそもどのような場所か、安全とは何かを考える意見も出されました。また、「“みんな”という言葉はいつから使われ始めたのか」という疑問から、最近使われやすい言葉であるという意見や、マルクスやレーニンが提唱した政治思想のスローガンとしても使われてきた言葉であるという意見も出されました。
その上で、“自然”という言葉の使われ方を考えるにあたり、根本のテーマである「震災とセクシュアリティ」について自分たち自身に問いかけるような意見が交わされました。“マイノリティ”という言葉を用いるとき、性的な意味で捉えるのか、多数派に対しての少数派という意味で捉えるのか、また、“自然”を“一般社会”や“ありのまま”と言い換えて使う際に、その言葉が指す枠から溢れる人、見えない位置にいる人が“マイノリティ”と当てはめられるのではないかという意見もありました。
実際の避難所の様子についても例を挙げながら対話は進み、“みんな⇔自然”や“告げられない”、“日常/非日常”などをキーワードに、次のような問いが立てられました。
・個人的なことを告げられないことは、震災を経て変化したのか
・非日常における公共の福祉を問う
・告げられないこと全体について問う
今回は、一つひとつの言葉が持つ深みを考えていく中で、「震災とセクシュアリティ」という根本のテーマに立ち返る問いが生まれたように感じました。今後も、あらゆる視点からテーマを掘り下げ、対話を通して根気強く考えていきたいと思います。
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報告:千葉真澄(てつがくカフェ@せんだい)
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