考えるテーブル

お問い合わせ

せんだいメディアテーク
企画・活動支援室
980-0821
仙台市青葉区春日町2-1
tel:022-713-4483
fax:022-713-4482
office@smt.city.sendai.jp
←前のページへ

てつがくカフェ

第39回 「震災とメディア技術」

■ 日時:2014 年 11 月 30 日(日)15:00-17:00
■ 会場:せんだいメディアテーク 6f ギャラリー4200 ホワイエ
■ ファシリテーター:西村高宏(てつがくカフェ@せんだい)
■ 参加無料、申込不要、直接会場へ
■ 問合せ:tanishi@hss.tbgu.ac.jp(西村)
■ 主催:せんだいメディアテーク、てつがくカフェ@せんだい
■ 助成:一般財団法人 地域創造
《今回の問いかけ》

この度の震災をとおして、わたしたちは、メディア技術への関わりについて大幅な問い直しを迫られているような気がします。
震災直後、沿岸地域の家屋や車などに襲いかかる容赦ない津波の様子を、被災地以外の方々は、自宅の茶の間で、まさに息を呑むように見届けられていたのではないでしょうか。しかもその様子は、何度も何度も繰り返しテレビで放映され、ネット上でも、好きなときに、好きな場所で、様々な関心からアクセスし、観ることができます。言い方を換えれば、被災地よりもそれ以外の地域の方々のほうが、ある意味においてはしっかりと震災の様子を〈把握〉していた、とも言えます。
メディア技術の効用は、まさにこういった〈いま〉性(時間性)や〈ここ〉性(場所性)を無効化したところでこそ存分に発揮されるものなのかもしれません。なぜなら、あらためて言うまでもなく、メディアとはもともと繋がっていない時間や異なった場所、そして離れた人々を繋ぎ、〈媒介(メディア)〉するものとして機能したときに初めてその意味を持ち得るものと言えるからです。
急速なメディア技術の進展のなかにおいては、これまでわれわれのリアリティをかたちづくってきた時間性や場所性、そして身体性の枠組みがほとんど機能していないかのようです。言い方を換えれば、これまで緊密に結びつき、一体化したものとみなされていた〈いま〉と〈ここ〉は、まさに〈溶媒〉のようになったメディア技術によって溶かされてしまい、またそれにともなうかたちで私たちの現実や環境も激しく再編成されていく運命をたどります。メディアは、わたしたち人間の開発した技術であると同時に、つねに、わたしたち人間の環境それ自体を編みなおし、新たなものとしてつくりかえていく側面をもっています。そういったメディア技術の進展に対して、わたしたちはいま、どのように臨むべきなのでしょうか。
今回の「てつがくカフェ」では、〈震災以降〉を生きるわたしたちが、いま、「メディア技術」にたいしてどのように臨むべきかについて、その可能性もふくめて、「てつがくカフェ」の特長を生かしながら粘り強く問い直してみたいと思います。みなさま、ぜひご参加ください。

西村 高宏(てつがくカフェ@せんだい)

 

*今回の「考えるテーブル てつがくカフェ」は、「対話可能性 記録と想起・イメージの家を歩く」展との関連企画です。展覧会をご覧いただいてからの参加をお勧めいたします。

 

《てつがくカフェとは》
てつがくカフェは、わたしたちが通常当たり前だと思っている事柄からいったん身を引き離し、そもそもそれって何なのかといった問いを投げかけ、ゆっくりお茶を飲みながら、「哲学的な対話」をとおして自分自身の考えを逞しくすることの難しさや楽しさを体験していただこうとするものです。
てつがくカフェ@せんだい http://tetsugaku.masa-mune.jp

第39回 てつがくカフェ「震災とメディア技術」レポート

写真1
今回のてつがくカフェはせんだいメディアテークの展覧会「記録と想起 ・イメージの家を歩く」(*1)の関連イベントとして、作品鑑賞とてつがくカフェでの対話を通し、考えを深めようと企画しました。考えるテーブルの家具は6f展示会場のホワイエに並べ、作品が発するさまざまな音や声が響く中、対話は始まりました。

写真2
前半は、テーマに沿って参加者が自由に語り合い、お互いの意見の違いを汲み取りながら、自分の考えを見つめ直してみる時間です。みなさんがそれぞれの経験をもとに話してくださり、メディアが時間や空間、人の身体性をも超えるほどの強度で震災を伝えるということが話題になりました。ある方は、被災地から離れた場所にいながら災害の映像を繰り返し見たことで、「メディアによって被災した」と語った知人の方の言葉についてお話ししてくださいました。また、被災者の顔を映像に撮ろうとしたとき、相手を傷つけているように感じて怖くなったという体験をされた方のお話から、メディアの加害性についても考えていきました。ほかにも、メディアは人と人とをつなぐだけではなく分断しているようにも感じられる、話すこと/聞くことも情報を伝えるメディア技術のひとつではないかという意見がありました。

写真3
後半は、前半の話題からキーワードを挙げ、私たちのもつ漠然とした問題意識を哲学的な問いの形にしていきます。ここではみなさんにたくさんの問いを立てていただきましたが、中でも注目を集めた「やさしいメディアのつくり方/選び方とは?」という問いから、今度は「やさしいメディア」とはどんなものかを考えていきました。ある方からは、受け取る情報を自分で選択し、自分のペースで受け取れることが大事なのではないか、またある方からは、相手の伝えたいことを身体全体で受けとめるという関係性を含んだものなのではないかという意見が語られました。
てつがくカフェで形になった問いについて、これからもじっくりと考え続けたいと思います。
写真5 写真4

写真8

*1…「記録と想起・イメージの家を歩く」
せんだいメディアテークが2014年11月15日〜2015年1月12日に開催した展覧会。台所や寝室など生活空間を模した空間に、同館が2011年5月から開始した、被災下の日々の生活を映像などで記録する活動「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の映像アーカイブを展示し、記録がもつさまざまな表情を引き出す試みをおこなった。

報告:S(てつがくカフェ@せんだい)

トピックス