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てつがくカフェ

〈3.11以降〉読書会-震災を読み解くために-第20回

■ 日時:2015 年 1 月 25 日(日)17:00−19:00
■ 会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
■ 参加無料、申込不要、直接会場へ。課題本をご持参ください。
■ 問合せ:philcfsendaiaw@gmail.com (綿引)
■ 主催:せんだいメディアテーク、てつがくカフェ@せんだい
■ 助成:一般財団法人 地域創造

 

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この「読書会」について
「読書会」は、あるひとつの本を取り上げ、それを参加者みんなで一緒に読んでいくものです。この読書会では、ほかの人々と共に読むということを最大限活かし、ひとつの本に対する人々の多様な「読み方」を大切にします。そうして参加者どうしが協力し合い、触発し合って、〈震災〉という出来事を――それを直接に扱う「震災関連書」をひとりで読むだけでは辿りつけないようなところまで――深く「読み解く」ことができるような場でありたいと願っています。

 

課題本

『聖地Cs』木村友祐著、(新潮社)

※収録作品のうち、「聖地Cs」のみを取り上げます。

 

 

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〈3.11以降〉読書会—震災を読み解くために— の進め方
この読書会では、以下のフェーズ(段階)を順にすすんで、何回かにわたってひとつの課題本をじっくりと、深く読み解き対話することを目指します。
なお、ここでの対話は普段近しいひとたちとする何気ない会話とは異なります。それは、会話を下支えし、日常を円滑に進めている“根本的な”事柄にあらためて光を当てる言葉のやりとりです。

 

・解釈フェーズ
課題本の一部分を音読しながら、著者の主張を一つひとつ、みんなで丁寧に確認し、共有していきます。

 

・再考フェーズ
解釈フェーズで共有された本の理解を土台に、著者の主張、本で用いられた概念等々を問いなおし、意見を交換し合い、必要に応じて課題本に立ち返っていきます。

 

・対話フェーズ
最後にあらためて、課題本を読んでわたしたちの心を捉えたものについて、今度はみんなで一緒になって考えます。課題本を読む前には無かった視点と言葉で〈震災〉を見て、考え、話していきます。

 

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「震災を読み解くために」読書会の理念

この「読書会」は、あるひとつの本を取り上げ、それを参加者みんなで一緒に読んでいくものです。ほかの人々と共に読むということを最大限活かし、ひとつの本に対する人々の多様な「読み方」を大切にします。そうして参加者どうしが協力し合い、触発し合って、〈震災〉という出来事を――それを直接に扱う「震災関連書」をひとりで読むだけでは辿りつけないようなところまで――深く「読み解く」ことができるような場でありたいと願っています。

 

私たちは、読書会というかたちで本を読むことが、単にひとりで本を読むときには得られないような、格別の効果をもたらすものだと考えます。

 

第一に、あるひとつのテキストを巡る多種多様な意見や思いに触れることによって、自分ひとりの理解がいかに特殊なものであるかを知ることができます。これを反対から言えば、本を読む営みのもつ豊かさに気づくことができるということです。ふだん多くの人にとって、ひとつの本を巡る解釈について誰かと熱く語り合う機会などそうないのではないでしょうか? そうだとしたら、ふだん自分がどのくらい、特殊な読み方をしているのかもわからないはずです。それは「読みの複数性」と言い表わすことができるような、読むことのもつ豊かさを引き出せていないということです。さらにまた、テキストを共に読むことで、読書会に参加する人々の(ふだんは隠された)多様性や他者性――彼らが自分とは異なる人間であるということ――に気づくことができます。これも日常の当たり障りない会話においては得難い体験ではないでしょうか。

 

また、第二に、読書会に参加し、他の参加者と協力することによってテキストと真に向き合うことができるというのも、読書会のもたらす効果のひとつです。さらにこの読書会は、「震災を読み解くために」、あくまで〈震災〉という出来事と関連するテキストを取り上げる予定ですから、テキストと真摯に向き合い、共に参加する人々の力を借りながら、「自分なり」を超えた読み方で〈震災〉という出来事を見つめ直すことができるという点にも、この読書会に参加することの意義が見いだせるはずです。

 

私たちは読書会という読みのかたちがもつ特性を最大限活かしながら、深く〈震災を読み解く〉ということ、また、そのための〈読みの力〉を鍛え上げていくことを理念として掲げ、その実現へと向けた努力を――参加者の方々と共に――重ねていきたいと考えています。

〈3.11以降〉読書会-震災を読み解くために- 第20回レポート

写真1

今回の読書会は、前回に引き続き『聖地Cs』(木村友祐著/新潮社)を取り上げました。前回は、小説全体の感想から、登場人物個々の思いや役割について考えました。今回は、それをふまえて、

① この物語がどのような物語か
② 登場人物の発言や振舞いについてどう思うか

を考えていくことになりました。
まず、①この物語がどのような物語か、については、参加者が黒板のテーブルにそれぞれが感じた物語像をチョークで書いていきました。「人間性の回復・生物に関する敬意の物語」など、主人公が自分自身を見つめなおし、命と向き合うことを読み取ったというような意見のほか、「不平等と葛藤の物語」など、震災前後の人々のあり様全体について読み取った意見、「地域を媒体として自分の存在を明らかにしていく物語」といった地域をキーワードにした意見などが出されました。

写真2

それらの読み方を共有したうえで、次に②登場人物の発言や振舞いについてどう思うか、を考えていきました。まずは主人公の動きに関心が集まりました。主人公の変わったところと変わらないところ、物語の最後に出てくる高笑いの意味、さらに小説には書かれていない主人公のその後にまで話は及びました。

また、原発事故の居住制限区域に取り残された牛たちを飼い続けている仙道さんが、なぜ売ることができない牛たちを生かし続けているのかという問いも出されました。それに対しては、資本主義への反省や、地域に対する誇りを守る等の意見が出されました。小説中にあった、仙道さんのセリフで牛以外食べるものがない状態をつくったのが県や国だったら自分は牛と共に餓死を選ぶこと、一方で、そういうことでなければ自分の意志で牛を食べるというくだりも、出てきた問いに対して示唆的であるとの意見が出されました。

写真3

ある面からみると無意味に見えるような取り組みに、それぞれの登場人物がどのような思いや意義を見出しているのか。それらを確認する回となりました。 次回も、引き続き今回の後半(②)について、今度はもう少し主人公以外の登場人物にも踏み込みながら、小説から一歩距離を置いて、批評的にみていく作業を続けたいと思います。そののちそれまでの対話を踏まえたうえで小説から離れた、より一般的な問いをつくりあげる予定です。

写真4

報告:三神真澄(てつがくカフェ@せんだい)

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